IIT(インド工科大学)インターンシップの全貌|インドの学生を青田刈りするには

こんにちは、HRピコです。

今回は、IIT(インド工科大学)のインターンシップについて、制度、目的、選考プロセスをご紹介します。私は3(インターンの受け入れは1年に1回なので3年間です) IITインターンの選考を実施し、学生の日本での受け入れをサポートしました。

 

IITのインターンの受け入れは、選考に比べてネット上での情報が少ない気がします。この記事が、皆さんのお役に立つと嬉しいです。

なお、IITインターンは非常に奥が深いです。1つの記事にするには難しいので、この記事では「選考プロセス」にフォーカスします。 

IITインターンシップに関する基本情報

まず、IITのインターンシップにおける前提情報を記載しておきます。

前提
  • 学生が学部3年生から4年生に上がるタイミングの夏休みに実施します。
  • この記事では「インドから日本の部署に受け入れる」という前提です。
  • インターンの選考は、採用選考と同様にIITのPlacement (就職課) を通して行われます。
  • インターンの対象は学部生 (学部=4年制) です。IITには 学部 (Bachelor)、修士 (Master) 、博士 (Doctor)の学生がいますが、学部が圧倒的に入学の競争率が高く、ゆえに学生の学力が高いです。

 

IITインターンを受け入れるタイミングは?受け入れる目的や意味は?

IITのインターンシップは、学生が3年生から4年生に上がる直前の夏休みに、約3か月程度実施します。ざっくりですがスケジュールと学生の学年を以下で表してみました。

IIT インド工科大学 インターン スケジュール

そもそもIITの学生をインターンとして受け入れる意味とは?

 

選考タイミングが早く、学生を見極める難しさがある

選考プロセスの詳細を書く前に私が興味深いと感じたのは、上の図にもありますが、インターンの選考はIIT学生が学部2年生から3年生に上がる前のタイミング、つまりインターンの約1年前に実施されることです。こういった就職関連の活動に彼らの学業が邪魔されないように、期末試験等が終わったタイミングから選考を開始させたいというIIT側の目的がある、と聞きました。選考する企業としては、そんな早い時期に、学生に専門性や知識が身についているのか、しっかり見極められるのか、という点が大きなハードルになると思います。

日本の学生を採用する際も「インターンで見極めてから」というプロセスを踏む企業が増えています。しかし、日本での技術系採用は (少なくとも弊社では) 院卒の学生がメインとなり、彼らが就職を見据えてインターンに来るときは修士1年生になっています。ですので5年程度は大学の勉強をしていますね。

そういった学生をインターン生として受け入れることに慣れていると、IITインターンの選考日程を見ただけでも「そんな早い時期に、3か月もインターンに受け入れる人を決めるなんて、リスクの高いことは避けたいです」という現場の声が聞こえることもあります。

 

ご安心ください。IITの学生はしっかり成果を出します。

そのように感じる背景は大いに理解できますが、ご安心ください。少なくとも弊社に来てくれたIITインターン生のほとんどは、短期間で、現場の期待以上の成果を上げ、「ぜひこの子に早期で採用オファー出したいです★」と言う現場マネージャーを数多く見てきました。

(早期オファー:図内の「Pre-Placement Offer」のこと)

 

また、3か月かけて達成する前提で現場が組んだプログラムを最初の1か月でIITの学生インターンが完了してしまったり、「入社23年目の若手社員と同じレベルの仕事をしてくれます」、という嬉しい (?) 悲鳴を現場から聞くことも非常に多いです。(人事としては、「それはそれで日本の若手社員大丈夫か!?」と心配になりますが、それほどにIITの学生のキャッチアップ能力が高い、ということなのです。)

 

IITのインターンは、そもそも企業が早期に優秀な学生にアプローチをする「青田刈り」に近い活動です。現在めちゃくちゃ専門性がある人材、というよりも、ポテンシャルと今度の成長に賭けるという側面があるのです。

 

IITのインターン実施、またその選考においては、IITの学生のポテンシャルを信じて、今出来る最大限の見極めをする。そしてそれを人事としてもなんとかサポートする必要があるのです。

 

IITインターンの選考プロセスとその詳細

ここからは、実際の選考プロセスと企業が準備しなければいけないことを、詳細にご説明します。

 

企業側の求人準備と公開

IITではインターンシップ選考の期間になると、大学の就職課が管理する学内のポータルサイトに、インターンシップの求人が学生向けに掲載されます。

 

求人のフォーマットはIIT就職課から企業に事前共有されるので、そこに以下をのような内容を企業が入力します。

  • インターンのテーマ名 (例えば「〇〇製品の〇〇技術の〇〇性の向上研究」といったイメージ)
  • 実施期間
  • 必要なスキル
  • 来日に際して企業が用意するもの (航空券、日本滞在中のホテル/アパート、日当の金額など)
  • 書類選考時の課題 (日本の就活でのESのように、企業の個別設問を課題として課すことが出来ます)

 

なお、スキルのミスマッチを防ぐために、求人を公開する学部を企業側で選ぶことも出来ます。

ちなみにIITでの採用活動と同様に、インターンシップにおいても企業担当窓口的な人が就職課から企業にアサインされます。人事の担当者は選考にあたりその人 (IIT学生がボランティアでやっている場合が多い) と密にコミュニケーションをする必要があります!

 

書類選考

IIT独自フォーマットのレジュメがあり、学生はそれを自分で埋めて、ポータル上で提出することで「エントリー」となります。レジュメには主に以下の項目があります。

  • 所属学部
  • IIT入学時の試験の点数 (入学後も結構重要みたいです。企業としても自頭力を判断できるのでGood)
  • 研究内容やプロジェクトの詳細
  • 基礎スキル (扱えるソフトウェアなど)
  • 課外活動 など

 

ただし、このフォーマットでは 人となり具体的に何が得意なのかが分かりづらいのです。そこで、前述した別の課題として、「具体的に研究プロジェクトで何を成し遂げたのか」や、「異文化コミュニケーションの経験あるか」などを別紙に記載いただくことも出来ます。

 

また、書類選考において「合格」は面接枠数を目安に判断しますが、「(優先順位も振った)予備リスト」を作っておくことも出来ます。面接に呼び込む段階で学生に辞退されてしまうこともあるので、面接枠を最大限に活用するためです。

「これらの学生が確実に書類合格です、ですが面接前辞退者がいたら空き枠にはこのリストからこの順番に追加して呼んで良いです」というコミュニケーションをIITの窓口としておきましょう。

Web面接

面接は、Webの場合がほとんどです。インターン生を選ぶためにわざわざ日本の社員がインドに行くのはコスパが悪いですし、IIT側もその前提でロジのサポートをしてくれます。面接枠 (日時)と書類合格した学生リストをIITの窓口に共有をすると、彼らの方が面接枠への学生の呼び込みををしてくれます。

以下、Web面接において人事として重要だと思うポイントをご共有します。

 

ロジ面

・面接日時はインドとの時差を考慮して事前にIIT側の担当者に相談して決めましょう。

IIT側の担当者は「この時間帯は授業があるから学生と設定しにくいかも」や「この時間がお昼 (または夕方) の休み時間だから、何枠か候補があるとよいかも」というアドバイスをくれます。

また、インターンの選考は短期集中的に行われるため、他社がどのような日程感で面接を実施するかという情報も窓口の人に聞いておくと良いでしょう。出遅れると、面接したい学生がみんな辞退してしまった、という事態にもなりかねません。

 

TeamsZoomは事前に動作チェックをしましょう。

学生はIITの寮内から自分のパソコンで面接に入ってくれる場合が多いですが、面接開始後にネット接続が悪いですというトラブルが発生することが頻繁にあります。事前に自社で使うツールで、IIT(企業窓口の人にお願いするのが良いでしょう) と接続チェックをすることを強くお勧めします。そこで問題があると、窓口担当が実際の面接を就職課のパソコンで実施するように準備してくれたりします。

 

・学生の電話番号も聞いておき、当日何かあったら日本から電話出来るようにしておきましょう。

事前に動作チェックをしていても、学生のマイクが聞こえない、とかこちらの音声が届かない、というトラブルも発生します。そういったトラブル対応のためにも、インターンの面接において、日本側は現場の面接員 (エンジニアの課長さんなど) だけではなく、必ず人事が同席することもお勧めします。

そして、Web会議ツールでトラブルがあったら、学生の携帯に電話をして状況を確認したり、音声は電話でつないでWeb面接を行う、など臨機応変な対応が出来るように準備と心構えをしておくことが重要です。

(会社携帯や会社の電話機からインドへの国際発信が出来るかも事前に準備しておきましょう。)

出来る限りの準備をし、トラブル時も焦らずに対応をすることで、現場の社員、インドの学生を安心させてあげることも人事の重要なお仕事だと思います。

 

選考に関して

・「今何が出来るか」ではなく「何が今後出来そうか、興味があるか」を重視

前述したように、面接のタイミングにおいて学生は2年生から3年生に上がるタイミングです。実際、特に日本の修士1年生と比べてしまうと、かっちりとした専門性やスキルが固まっていないケースも多いです。

実際に日本に来るまでには1年近くあるので、本人の興味のある分野を確認したり、会社での仕事や研究内容を伝えることで興味を持ってもらったり、1年後にはこういうことを身に着けて来てくれるとインターンもしやすいよ、というすり合わせのコミュニケーションを取ることも重要なのです。

 

・異文化コミュニケーション力

インターンシップに来ることになったIITの学生は、母国語が通じない、文化も異なる異国の地で3か月間生活をしながらインターンをすることになります。会社においても初めてのチームメンバーと初めての環境で成果を出すことが求められます。もちろん受け入れる場合は企業側も英語でのコミュニケーションとなりますが、それでも言葉の壁はあるでしょう。

そういった環境でも臨機応変に楽しめるようなパーソナリティや思考の柔軟性があると、より日本のチームに馴染み、本人も本来の力を発揮しやすいです。弊社でも、来日してから非常に重いホームシックになる学生さんがこれまで少なからずいました。

面接の際は、例えば過去自分のComfort zoneから出た経験があるか、日本語訛りのある英語も丁寧に聞こうとする姿勢、対話がしっかりと出来るか、接続トラブル時の反応なども人事の目で確認しておくと良いでしょう。

 

インターンシップのオファー出し

Web面接でインターンに来てほしい学生の見極めが出来たら、インターンのオファー出しとなります。

別の企業のインターンオファーを受けることもあるので、可能な限りオファーを早く出すことが重要です。オファーのやり取りは必ず IITの窓口を通じて、以下①~④の流れで行われます。

  • 企業側:IIT窓口に面接合格者の連絡をする
  • IT窓口:学生に合格連絡をす
  • 合格した学生:オファー受諾の返事をIIT窓口にする
  • IIIT窓口:企業にオファー受諾を知らせる

 

なお、上記③のタイミングでも「学生にオファーを辞退される」ことがあります。ですので、面接前と同様に、インターンの受け入れ枠数と優先順位を付けたオファーリストを準備出来ると、IITの担当者は辞退されてもすぐに次点候補者にコンタクトすることが出来、時間も短縮できます。もちろん、合格レベルに達している人が他にもいれば、という前提ですが。

 

このプロセスにおいて正式な書面はまだ不要ですが、受諾者が固まったら、インターンの処遇や受け入れ条件などを記載した正式なレターを発行することが求められます。すぐにでは無いので、面接が終わって少し落ち着いた9月頃に対応していました。

 

ここまでで、IITインターンの選考は終了です!ここからは来年の受け入れに向けた準備が始まります。また別の記事でお会いしましょう!

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